不規則抗体陽性者への輸血
2014/03/13 Thu 00:21
今回は、少し専門的な話で、医療者向けです。ま、自分で忘れないために…。
ABO型の血液型に対する抗A抗体、抗B抗体を規則抗体といい、その他の赤血球型同種抗体を不規則抗体といいます。不規則抗体は後天性であり、輸血や妊娠で産生されます。このような不規則抗体を保有する患者に抗原陽性の血液を輸血すると、溶血などの副作用が起こることがあります。
では、不規則抗体陽性者への輸血はどのように考え、行えばよいのでしょうか?少し調べてまとめてみました[残業]。
ABO型の血液型に対する抗A抗体、抗B抗体を規則抗体といい、その他の赤血球型同種抗体を不規則抗体といいます。不規則抗体は後天性であり、輸血や妊娠で産生されます。このような不規則抗体を保有する患者に抗原陽性の血液を輸血すると、溶血などの副作用が起こることがあります。
では、不規則抗体陽性者への輸血はどのように考え、行えばよいのでしょうか?少し調べてまとめてみました[残業]。
不規則抗体陽性者への輸血は、基本的に抗原陰性血を輸血することです。しかし、実際には副作用がそれほど強くなく、臨床的意味を持たない不規則抗体も存在するため、血液センターでは、抗原陰性血を選択する基準を以下の表のような考え方を示しています(表1)。
そして、それぞれの不規則抗体の特徴と抗原陰性頻度をまとめてみました(表2)。

左図に不規則抗体保有者における輸血までの流れを示します。
不規則抗体の同定、およびその抗原陰性血の確保には時間がかかる場合が多々あります。特に、作者の住むような田舎では、むしろ珍しいことではありません。交差適合試験が陽性となってからの対応では、輸血治療を遅延させることになります。
このため、「輸血療法の適正化に関するガイドライン」では、『患者(受血者)については不適合輸血を防ぐため、予めABO血液型、Rho(D)因子の血液型検査を行う。また、可能な限り間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニングも行う。』とされています。
そして、不規則抗体が陽性であったならば、その抗体を同定し、表1に従って、抗原陰性血を選択する必要があるか判断します。
ちなみに、表2の抗原陰性頻度が低いほど、その血液が確保困難であることを意味しています。
選択する抗原群 | Rh,Kell,Kidd,Duffy,S,s,U,Diego,Pk,P,I(allo),Jraなど |
選択しない抗原群 | Leb*,P1,N,Xga,Bga,JMHなど |
反応性により選択を考慮する群 | Lea,M |
そして、それぞれの不規則抗体の特徴と抗原陰性頻度をまとめてみました(表2)。
不規則抗体の種類 | 抗体の特徴 | 抗原陰性頻度(%) |
抗Le式 抗Lea 抗Leb | 主に自然抗体・冷式抗体 稀に血管内溶血 臨床的意義は少ない | Lea(-):70% Leb(-):20% Le(a-b-):10% |
抗Rh式 抗D、抗E 抗e、抗C 抗c | 免疫抗体 血管外溶血 臨床的意義のある抗体としては最も多く検出 その中でも抗Eの検出頻度が高い | D(-):0.5% E(-):50% e(-):10% C(-):10% c(-):50% |
抗P式 抗P1 抗P、抗Pk 抗PP1Pk | 抗P1;自然抗体、冷式抗体 抗P;P1k、P2k型に存在 血管内溶血 抗PP1Pk;p型に存在 血管内溶血 | P1(-):60% P(-):ごく稀 PP1Pk(-):ごく稀 |
抗J 抗Jka 抗Jkb | クームス法で検出される。 免疫抗体 血管内溶血、血管外溶血 抗Jkaの検出が多い。 | Jka(-):25% Jkb(-):20% |
抗Fy 抗Fya 抗Fyb | クームス法のみで検出され、ブロメリン法では検出不可 免疫抗体 血管内溶血 | Fya(-):1% Fyb(-):80% |
抗Di 抗Dia 抗Dib | クームス法で検出される。 免疫抗体 血管内溶血 抗Diaの検出が多い。 | Dia(-):90% Dib(-):0.1% |
抗MNSs 抗M、抗N 抗S、抗s | ブロメリン法では検出不可 抗M、抗N;自然抗体、冷式抗体 抗S、抗s;免疫抗体、クームス法で検出される。 | M(-):20% N(-):30% S(-):90% s(-):0.1% |
抗Kell 抗K、抗Kpa 抗Jsa | クームス法で検出される。 免疫抗体 血管内溶血 日本人は100% K-k+、Kp(a-b+)、Js(a-b+)なので日本人間の輸血では問題ない。 外国人からの輸血で抗体産生の危険がある。 | K(-):100% k(-):0% Kpa(-):100% Kpb(-):0% Jsa(-):100% Jsb(-):0% |

左図に不規則抗体保有者における輸血までの流れを示します。
不規則抗体の同定、およびその抗原陰性血の確保には時間がかかる場合が多々あります。特に、作者の住むような田舎では、むしろ珍しいことではありません。交差適合試験が陽性となってからの対応では、輸血治療を遅延させることになります。
このため、「輸血療法の適正化に関するガイドライン」では、『患者(受血者)については不適合輸血を防ぐため、予めABO血液型、Rho(D)因子の血液型検査を行う。また、可能な限り間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニングも行う。』とされています。
そして、不規則抗体が陽性であったならば、その抗体を同定し、表1に従って、抗原陰性血を選択する必要があるか判断します。
ちなみに、表2の抗原陰性頻度が低いほど、その血液が確保困難であることを意味しています。
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抗Fyb抗体は、Duffy式血液型による分類です。抗Fyb抗体があるということは、抗原としてはFy(a+b-)ということになるかと思いますが、実はこれは日本人では80%がこの血液型なので珍しいものではありません。日本人のどのくらいの頻度でその抗Fyb抗体を持っているのかは、不明ですが、血液型としてはメジャーな部類になります。
もし輸血歴があるのであれば、その輸血製剤の中に残りの20%の血液型Fy(a+b+)またはFy(a-b+)の方の血液が混じっていたか、輸血歴がないのであれば、出産などで、他人(家族を含む)の血液が混じる機会があったものと推測します。
仮にあなたが女性で、出産経験があるのであれば、むしろあなたの夫や子供が珍しい血液型である可能性があります。
ちなみに、Fy(a-b+)の血液型は1%程度ですが、まれ血になります。夫がそうである可能性が考えられます(子供は必ずFy(a+b+)になります)。
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